第44回
消えた煙突
さて、さっそく問題です。東大本郷キャンパスと上野の不忍池はどのくらい離れていると思いますか?

本郷キャンパスの最寄駅は本郷三丁目駅です。上野に出るにはそこから都営大江戸線に乗って一駅ですから、遠くはないにしても歩くとちょっとかかりそうな感じがします。でも、もし機会があれば試していただきたいのですが、実際に行ってみると意外なくらい近いことがわかります。最短距離だとおよそ100メートル。本当に目と鼻の先なのです。

もっとも、本郷キャンパスの中心地(安田講堂のあたり)からだと600メートルくらい離れていますので、普段はあまり不忍池がすぐそこという実感はありません(ですので、休み時間に不忍池でボートを一漕ぎ、という人を見たことは一度もありません)。キャンパスは上野方面、つまり東側にぐいっと広がっていますので、東端の池之端門からなら不忍池は非常に近いという訳なのです。

写真1
ちなみに写真1が池之端門です。進入禁止の標識が「これでもか!」というくらい貼りついていて非常に立入禁止感がありますが、気にせず入ってください。車でなければ、入構に一切制限はありません。

写真2
東大病院関係の施設を左手に見ながらしばらく進むと、お茶の水や上野行きのバスが居並ぶロータリーにたどり着きます(写真2)。池之端門からここまでは約300メートル。標高の低い不忍池から本郷台地に一気に上ることになりますので、この季節は汗がうっすらにじみます。

実は今回この道を歩いたのは、とある煙突を紹介したかったからでした。本当は写真2の真ん中あたりに写っているはずだったのですが、撤去されてしまったようで、残念ながら撮影することはできませんでした。ミッション遂行ならずです。おそらく清掃設備の煙突だったのだと思いますが、東大病院のすぐ北にあることから、学生のあいだではいわくつきの煙突として知られていました。実験に使った動物や、更には◯◯を焼いているのではないか(←◯◯はご想像ください)という噂も流れていました。実際はそんなことはなかったと思いますが、なんとなく不穏な予感を誘う、怪しくも魅力的な煙突だったのです。

懐かしい物が消えてしまうのは悲しいですが、最後に希望のある話を一つ。かつて総合図書館の前にあった楠の移植先がわかりました(楠については、第37回の記事をご覧下さい)。三四郎池の南、医学部二号館前の広場に移植されていたのでした(写真3)。めでたし、めでたし。

写真3
バックナンバー目次
第1回 本郷キャンパスの花見スポット
第2回 嗚呼、コマリョー
第3回 「運動会」と「鉄門」
第4回 見ると留年する池〜一二浪池
第5回 イチョウのジンクス
第6回 全体にまとまりのない大学
第7回 「シケプリ」のシステム
第8回 春の行事
第9回 銅像の「裏」
第10回 安田講堂の地下
第11回 赤門のヒミツ
第12回 ドーバー海峡を横断
第13回 弥生から根津へ
第14回 塀を乗り越える学生たち
第15回 東大キャンパスの歩き方
第16回 小石川植物園での昼寝
第17回 落第横丁
第18回 フサカを用いた学生実験
第19回 無料展望台
第20回 宇宙船の侵略
第21回 門と紋
第22回 スクラッチタイル
第23回 猫文二
第24回 図書館のスプリンクラー
第25回 東大キャンパスに名前を残す方法
第26回 ジャングルの中の廃墟
第27回 本郷ノスタルジア
第28回 御殿下(ごてんした)
第29回 駒場らしさ
第30回 一高の柏葉
第31回 レーニン体育館
第32回 東大生協で頭脳パンを買う
第33回 東大病院と龍岡門
第34回 当た〜り〜
第35回 ヤギのつもりが利き酒体験
第36回 思い出のグリスパ
第37回 楠の木陰で涼む
第38回 海辺のリゾート
第39回 ヤギはどこに?
第40回 駒場の散りゆくイチョウ
第41回 学生街の喫茶店
第42回 東大と前田家
第43回 三四郎と歩く本郷