―第30回― 一高の柏葉
駒場キャンパス正門の木製の扉を見ますと、そこに柏の葉の文様があしらってあるのに気づきます(写真1)。これは、駒場キャンパスの前身である旧制第一高等学校の校章「柏葉章」(はくようしょう)です。キャンパスが新制東京大学に引き継がれたあとも、門はそのまま使われることになり今日に至っていますので、このようなところにも一高の遺産を見ることができるという訳です。
一高はもともとはずっと現在農学部がある向丘キャンパス(文京区向丘)の場所に置かれていました。本郷キャンパスから「ドーバー海峡」(
第12回
記事で紹介)を越えたところにあるキャンパスです。一高を指して「向陵」という言い方をすることがありますが、「陵」というのは丘のことですので、向丘という地名が一高の代名詞になっていたことがわかります。それが1935年に駒場に移設されることになり、新制東京大学に吸収されるまでの最後の15年間は、一高生はこの場所で学生生活を送りました。
さて、一高と言えば蛮カラな学風で知られていますが、私も偶然そのような一高らしいシーンを目撃したことがあります。あれは1999年頃のことだったでしょうか。一高卒業生の方々(もちろんおじいさんたち)が、袴に下駄姿で「第一高等学校」と書かれた幟を空高く掲げて、太鼓を叩きながら大声で寮歌を歌っている光景を目にしてしまったのです。正直言ってちょっと異様な感じもしなかったわけではないのですが、かつての一高の雰囲気が少しだけでも垣間見れたのは貴重でした。そのおじいさんたちがかつて寮生活を送っていた駒場寮もその後取り壊されてしまいましたし、しかもあろうことかその日寮歌祭の会場だった生協食堂ももう無くなってしまいました。月日が経つにつれて、かつてのアツかった駒場の面影はどんどん消えていってしまいます・・・。
正門を入って左に進んだところにある「一高ここにありき」という碑が、諸行無常とささやいています(写真2)。
写真1
写真2
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