第42回
東大と前田家
東大の本郷キャンパスはかつて加賀前田家の上屋敷だったということは、以前の記事でもご紹介しました。キャンパスを歩いていると、ところどころで三四郎池、赤門、御殿下、懐徳館など前田家ゆかりの場所に行き当たります。(それぞれの場所については、第4回第11回第28回第39回の記事をご覧ください。)東大の前身は前田家の藩校だったと言われても納得してしまいそうな勢いで、あちらこちらで前田家です。

しかし何といっても加賀百万石ですから、これだけでは終わりません。実は駒場キャンパスが置かれている駒場も前田家ゆかりの場所なのです。

そんなことに気づいたのは私がまだ大学1、2年生の頃。ある日、休み時間に駒場キャンパスの周りを歩いていると、駒場公園というところに迷い込んでしまいました。大学から歩いて10分位のところです。公園の中の小道を歩いていると、背の高い木々の合間に戦前もののドラマに出てきそうな洋館がそびえ立っているのが見えてきたのです(写真1)。今回、10数年ぶりに再訪してきましたが、これが旧前田候爵家駒場本邸です。隣には和館も建っています(写真2)。戦前の貴族というのはこういうところに住んでいたのかと、ため息が出そうです。

写真1


写真2
ちなみに、洋館も和館も内部見学できますので、関心のある方はぜひ前田家探検隊を組織してお出かけください。一見の価値ありです。

洋館で印象的なのが、外壁タイルがスクラッチタイルだということ。本郷キャンパスのメイン建物群と同じタイルです(「スクラッチタイル」については第22回の記事をご覧ください。)東大と前田家はやはり浅からぬ仲のようです。

調べてみますと、関東大震災で大きな被害を受けた本郷キャンパスを復興するために、前田家がそれまで本郷に持っていた土地を手放して、代替地として提示されたこの駒場に引っ越したということのようです。そう考えると、前田家は東大のために住み慣れた土地を離れて(まだ当時は)草深き駒場に移ってくれたという訳なのでしょう。さすが、百万石。気前がいいですね。