知られざる東大キャンパスのこんな話やあんな噂・・・
夏真っ盛り。
炎天下の本郷キャンパスでオアシスの役割を果たすのが、
安田講堂前の楠です。
楠は講堂前の広場の両脇に二本、左右対称に立っているのですが、
より立派なのは向かって右側の木でしょう(写真1)。
こんもりと生い茂る葉は遠目には暑苦しいくらいですが、
木陰に入るとこの通り(写真2)。
ベンチも用意された爽やかな休憩スペースです。
枝振りが立派なので、よくスケッチしている人を見かけます。
私が訪ねた日は、
ちょうどキャンパス見学の高校生の団体が木陰で一休みしているところでした。
なにしろ木陰が大きいですから、
大人数のグループでも難なく収容できてしまいます。
また、少し見えにくいですが、
奥のほうにはベンチで横になって昼寝をしている人も写っています。
時計を見ると3時ちょっと前。
日なたに出ると灼熱の太陽に照らされますので、
私もこのまま横になりたい誘惑にかられましたが、
それをぐっとこらえて総合図書館前へと向かいました。
といいますのも、ほかに急ぎ見たいものがあったのです。
楠は楠でも、総合図書館前の楠がなくなってしまったという噂を耳にしたので、
この日はその確認のために本郷キャンパスに来たのでした。
本郷キャンパスは左右対象に楠を植えるのが好きなようで、
総合図書館前にも2本大きな楠が立っていました。
やはり木陰にはベンチが設けられていて、
そこに腰掛けて本を読んだりタバコを吸ったりをしている人をよく見かけたものです。
それがいまはこのようになってしまいました(写真3)。
あらあら、ですね。
まるで隕石が落ちたあとのよう。
2本とも根こそぎ取り払われてしまいましたので、
総合図書館の入口をはさんで左右対称にクレーターが二つできてしまったという訳です。
もっとも長年愛されてきた楠ですから
撤去にはそれなりの理由があるとのことです。
調べてみると図書館スペースの再編と関係しているようで、
総合図書館のホームページの「よくある質問」ページには、
楠はどこかに「移植」されると書かれています。
さすがにもうどこかに移植されている頃だと思いますが、
果たしてどこなのでしょう。
移植された先でまた枝葉を広げ、
涼しい木陰を作ってくれるとよいのですが、
移す前に枝葉が取り払われてしまいましたので、
それまでしばらく時間がかかってしまうのでしょうね。
東京大学大学院博士課程満期退学。2006~07年に、英国・シェフィールド大学の修士課程に留学。専門は19世紀英詩。