知られざる東大キャンパスのこんな話やあんな噂・・・
本郷キャンパスは割に変化の少ない場所です。
急にいままで塀だったところに門ができたり(第14回参照)、
学士会館分館が取り壊されて新しい校舎が建ったり(第27回参照)と
小規模な改変は見られますが、
全体として見れば(よい意味で)十年一日のごときキャンパスです。
正直ボロがきているところもあるのですが、
ちょっとずつ直しながらなんとか乗り切っているようです。
なんだかヨーロッパの古い街のようですが、
景観を守る代わりに、少しくらい不自由があってもがまんするという心構えなのでしょう。
それと比べて駒場キャンパスの移り変わりの早さといったら、
高度経済成長期の日本を見ているようです。
十年前は事務が置かれていた建物がいつの間にか「駒場博物館」になっています(写真1)。
正確に言うと、
昔もこの建物の2階部分は博物館として使われていたのですが、
1階にあった事務を新しい建物に移し、
また2階の床を取り払って天井の高い平屋建てにすることで、
より広々とした博物館に改装したということのようです。
せっかくですので中に入ってみましたら、
ここまで頭上スペースがせいせいとした博物館もめずらしいというくらいに
天井が高くてびっくりしました。
博物館の場合は
昔の建物をそのまま改装して使っているので思い出は保たれるのですが、
以前の生協食堂が壊されてしまっていたのはショックでした(写真2の草地が生協食堂跡地です)。
2階建ての学食だったのですが、
あれは1998年の秋だったでしょうか、
2階の奥に「グリスパ」というスペースができて話題を呼んだものでした。
普通の学食はもちろんボリュームと安さ重視の品揃えなのですが、
グリスパは違いました。
ちょっとだけ高級路線で、サラダやケーキなどのサイドメニューも選べたりして
当時はものすごくおしゃれな感じがしたものです。
しかも事前に食券を買うのではなく、
トレーの上に注文したメインの料理や小皿を並べてレジに進むというのが新鮮でした。
当時は最先端(?)だったグリスパももうないのかと思うと月日の流れを感じます。
その生協食堂の脇には、
ひょっとしたら一高時代のものではないかというくらいに
古くて汚い屋外プールがありました(きっと排水溝がつまってしまっていたのでしょうが常に緑色の水がたまった状態でした。)
グリスパから屋外階段を下りると右奥にプールが見えて「おえっ」と感じたものですが、
そのプールも見事埋め立てられてしまっていました。
キャンパスが清潔になるのはいいことなのかもしれませんが、
全部きれいにしてしまうのではなく
不思議スポットもきちんと残しておくくらいの「余裕」がほしいと
思ってしまうのは私だけでしょうか。
東京大学大学院博士課程満期退学。2006~07年に、英国・シェフィールド大学の修士課程に留学。専門は19世紀英詩。