知られざる東大キャンパスのこんな話やあんな噂・・・
本郷と言えば、東大の代名詞にもなっている街。
明治の頃から学生街として発展してきたので古い建物も多く、
全体の雰囲気としては私が大学に入った十数年前と
それほど大きくは変わってはいないと思います。
でも、もちろん街というのは変化するもの。
しばらく前の本郷の様子を思い出していくと、
この場所から失われてしまったものが急に懐かしく感じられてきます
私にとって、消えてしまったものの中で特に惜しかったのは、
学士会館分館のビアガーデンです。
暑い季節、ビールでも一杯というときにまず選択肢に入ってきたのは、
赤門横にあった夏限定のこの空間でした。
夕暮れ時になると、
大学キャンパスや近所のオフィスからこのビアガーデンに人が群がってきては、
冷たいビールで喉をうるおしていたものでした。
ただ、会場が会館脇の庭だったということもありヤブ蚊が多く、
ゼミ終了後などに「学士会館のビアガーデンに行こう!」と提案しても、
「え?、あそこは蚊に刺されるからイヤだな」と反対意見が出ることもありましたので、
好き嫌いの分かれるスポットだったのかもしれません。
私にとっては本郷の夏の風物詩だったですが・・・。
この学士会館分館は数年前に取り壊され、
跡地には現在東大が何か新しい建物を建設中です(写真 1)。
それから、最近「本郷館」が壊されてしまったのは本当に残念でした。
本郷館というのは、
いまから百年以上も前の1905年に建てられた木造3階建ての巨大下宿屋です。
正門から徒歩5分くらいのところにありました。
平屋でも心もとないような弱々しいつくりなのにもかかわらず、
それが3階建てだということにはじめて見た時は心底驚きました。
でも人も建物も見かけで判断することは禁物で、
関東大震災も東日本大震災も生き延びたのですから
芯が強い建築だったのでしょう。
取り壊す前まで住人もいたと聞きます。
かつての本郷館の偉容をご覧になりたい方は
ぜひインターネットで写真を検索してみてください。
2011年8月に解体工事が行われ、
9月のいまはもう更地になってしまっています。
煉瓦づくりの塀だけが残されており、
かつての本郷館の面影をかすかに伝えています(写真2)。
東京大学大学院博士課程満期退学。2006~07年に、英国・シェフィールド大学の修士課程に留学。専門は19世紀英詩。