知られざる東大キャンパスのこんな話やあんな噂・・・
東大の駒場キャンパスには何とも不思議な一角があります。
それはキャンパスの中央を貫く銀杏並木を歩くと目に入ってきます。
何の変哲も無い人工池なのですが、
ものものしくフェンスに覆われていて、
次のような注意書きの看板が立てられています(写真)。
「この用水には、フサカという蚊の一種が生息しております。フサカは非吸血性であり学生実験の材料として大切な生物です。フサカの生息を害するキンギョ、フナ等の魚類を放なさないでください。」
東大の新入生は、
必ずと言っていいほど4月か遅くとも5月のうちにこの看板を見つけては、
周りの学生と「何なんだあれは!」と言い合います。
フサカは非吸血性らしいけど、
いざ飛んで来たら見分けはつかないからパチンとつぶしてしまうかもしれないよね。
学生実験というのも何だか学生を実験台にしてそうで怖いね。
魚を放り込まれることを怖れるよりは、
殺虫剤や蚊取線香を使わないように書く方が効果的なんじゃないか。
だいいち、ここでキンギョとフナなんて具体的に書かれたら、
かえってそうしたものを放したくなるよね・・・などなど。
ツッコミどころが満載の看板なのです。
しかしよくよく考えてみると、
このフサカについて話すことをきっかけにして友達を作る東大生も実は多いように思うのです。
入学したての寂しい時期に、
この笑いを誘う看板と、蚊を養殖しているという前代未聞の池を見て、
周囲と心を通わせ合う学生が一定数いるのだとしたら、
割とフサカは学生生活の役に立っていると言えるのではないでしょうか。
どう考えてもあまり重要施設とは言えないこのフサカの養殖池が、
駒場キャンパスど真ん中の一等地に置かれているのは、
実はここで東大生の友達づくり支援という壮大な「学生実験」を
行っているからなのではないか・・・。
そう想像したくなります。
東京大学大学院博士課程満期退学。2006~07年に、英国・シェフィールド大学の修士課程に留学。専門は19世紀英詩。